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東京高等裁判所 昭和61年(行ケ)258号 判決

(争いのない事実)

一 本件に関する特許庁における手続の経緯及び本件審決理由の要点が原告主張のとおりであること、並びに本件登録意匠と引用意匠とが意匠に係る物品を共通にすることは、当事者間に争いがない。

(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二 本件審決の認定判断は、以下に説示するとおり正当であつて、これを違法とする原告の主張は理由がない。

1 成立に争いのない甲第二号証(本件登録意匠の意匠公報)によれば、本件登録意匠は、意匠に係る物品を「クリスマス用装飾電球」とする別紙図面(一)に示すとおりの意匠であつて(以上の点は、当事者間に争いがない。)、その構成は、ソケツトの上方に電球を嵌合したものにおいて、ソケツトは、全体がほぼ円柱形状(詳しくいえば、下方をわずかに細径とした逆円錐台形状)で、上部に段部がなく、正面及び背面の下方ほぼ2/3の部分に直径より少し狭い幅の縦長ほぼ長方形でその上端の切り込み角の湾曲な平坦面を、底面にほぼ十字状のコード孔をそれぞれ形成したものであり、電球は、ソケツトの約半分の太さの円柱形状の上方を円錐状として先端に小円球を形成したものであり、ソケツトと電球(露出部分)との長さの比は、約一対一・二となつていることを認めることができる。

2 原本の存在成立に争いのない甲第三号証(本件図書のうち表紙及び引用意匠を記載した第四七四頁部分)及び成立に争いのない乙第一号証(引用意匠の掲載部分の原本)によれば、引用意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前の昭和四五年三月九日特許庁資料館受入に係る本件図書の第四七四頁最上部<省略>に記載された別紙図面(二)に示すとおりの意匠であつて(以上の点は、原告の明らかに争わないところである。)、その構成は、ソケツトの上方に電球を嵌合したものにおいて、ソケツトは、全体がほぼ円柱形状(詳しくいえば、ほぼ同径であるが、下方をごくわずかに細径とした逆円錐台形状)で、上端周縁肩部に段部があり、正面(背面については明らかでない。)下方ほぼ3/5の部分に直径より少し狭い幅の縦長ほぼ長方形でその上端切り込み角が軸心に対して直角をなす平坦面を形成したものであり(底面については明らかでない。)、電球は、ソケツトの約半分の太さの円柱形状の上方を円錐状として先端に小円球を形成したものであり、ソケツトと電球(露出部分)との長さの比は約二対一となつていることを認めることができる。原告は、前掲甲第三号証(審判手続における甲第一号証)は、被写体の具体的形状構成が不明確で、これによつては引用意匠の要素を特定してこれを明瞭に把握し、当該物品のイメージを得て、本件登録意匠と対比することができない旨主張するが、本件審決が、本件登録意匠と対比した引用意匠は、本件図書の当該部分<省略>に記載された意匠そのもの(成立に争いのない乙第一号証の意匠)にほかならず、右乙第一号証によれば、引用意匠が全体的な構成をまとまりあるものとして把握するに充分な大きさと明瞭性を有していることが明らかであり、これにより叙上認定のように引用意匠の構成を認識することができ、したがつて、本件登録意匠との対比に何ら欠けるところはないから、原告の右主張は到底採用することができない。

3 以上認定の両意匠の構成を対比すると、両意匠は、ソケツト上方に電球を嵌合したものにおいて、ソケツトは、全体がほぼ円柱形状(詳しくいえば、下方を程度はともかくわずかに細径とした逆円錐台形状)で、正面下方のほぼ3/5ないし2/3の部分に直径より少し狭い幅の縦長ほぼ長方形の平坦面を形成したものとし、電球は、ソケツトの約半分の太さの円柱形状の上方を円錐状として先端に小円球を形成したものとした基本的構成態様において共通しているが、その余の構成において相違するものということができる。そこで、前掲各証拠に基づいて、両意匠の前記相違点について順次検討するに、<1>ソケツトの下方細径の程度の差及び平坦面の長さのソケツト全体に占める割合の差は、両意匠のソケツトがいずれも全体としてほぼ円柱形状であるとの印象を改めさせるほどのものではなく、<2>両意匠におけるソケツトの上端切り込み角の形状の差は特に看者の注意を引くほどのものでなく、<3>引用意匠におけるソケツトの上端の段部は十分に注視してはじめて認識することができる程度のものであり、<4>両意匠におけるソケツト背面の平坦部の存否及び底面の形態は、仮に差異があつたとしても、その部位が目立つ部分でなく、特に看者の注意を引くものとはいい難く、また、<5>ソケツトと電球(露出部分)との長さの比についても、両意匠のそれは、いずれも、この種物品において極めて普通に見られる態様のものであつて、両意匠を全体的に対比観察するときこの点が格別看者の注意を引くものということはできない。これを要するに、これらの差異は、両意匠を全体的に対比観察した場合、いずれも部分的な差異であつて、両意匠全体の印象に大きな影響を与えて両者を別異のものとするほどの差異とみることはできない。なお、原告は、両意匠の前記<2>及び<3>に示した差異について、本件審決はこれら構成を看過し、その差異について判断していない旨主張するが、右差異は上記程度のものであつて、両意匠の類否を左右するものでないから、右主張は、本件審決の結論に影響を及ぼさない事項についてその不当をいうものにすぎない。そうすると、両意匠において看者の注意を最も引く特徴的な構成は、前認定の基本的構成態様であつて、この部分が両意匠の類否を支配する主要部であるというべく、右構成態様において前示のとおり共通する以上、両意匠は互いにその美感において類似するものというべきである。原告は、本件審決は、両意匠の基本的構成態様の認定対比及び全体的観察に欠ける旨主張するが、前記争いのない本件審決理由の要点に徴すれば、本件審決は、両意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様を通じて、共通点及び差異点を総合して両意匠の類否を全体として考察しているものということができ、前説示のとおり、基本的構成態様の認定の精粗自体が本件審決の結論に影響を及ぼすものとはなし難いから、原告の右主張は採用することができない。更に、原告は、両意匠の基本的構成態様たるソケツト及び電球の形状並びにその構成比により、本件登録意匠では細長い電球の部分が強調され、引用意匠では長いソケツトの部分が強調されるとし、また、本件登録意匠のソケツトは先細状で平坦面が大きいためシンプルでスマートな印象を与え、引用意匠のソケツトは上半の円柱形状部分の占める割合が大きいためずんぐりした印象を与え、これら印象は前記の具体的構成態様の差異及びその相乗効果により強調され、また、具象的にいえば、本件登録意匠ではソケツトが「燭台」(正面視。なお側面視すれば「聖火台」)を、電球が「蝋燭(本体)」を、したがつて、全体として燭台と蝋燭の組合せを表し、引用意匠ではソケツトが「蝋燭(本体)」を、電球が蝋燭の「炎」を、したがつて、全体として炎をつけた蝋燭を表しているから、両意匠は具象される形態、創作の意図及び範囲並びに看者に与える印象を異にし、需要者が両意匠を彼此混同するおそれはないと主張するところ、両意匠からそれぞれ原告主張のように、シンプルでスマートあるいはずんぐりの印象を受け、また、炎をつけた蝋燭あるいは燭台と蝋燭の組合せを連想し得ないわけではないが、両意匠を全体的に対比観察する場合、看者が両意匠を、通常それぞれ右のような印象あるいは右のような事物の連想をもつて記銘するものということはできず、結局、右印象ないし連想が前記共通点のもたらす印象を圧して看者に全く異別の美観を起こさせるものとは認め難い。したがつて、原告の右主張も採用するに由ない。

(結語)

三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は理由がないものというほかない。よつて、これを棄却する。

〔編註その一〕 本件における請求原因は左のとおりである。

原告訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、意匠に係る物品を「クリスマス用装飾電球」とする別紙図面(一)の登録第五四四三二四号意匠権(昭和五三年三月一四日意匠登録出願、昭和五五年八月二八日設定登録。以下この意匠登録を「本件意匠登録」といい、同登録に係る意匠を「本件登録意匠」という。)を有する者であるところ、被告は、昭和五七年一二月二八日、本件意匠登録に対し無効の審判を請求し、昭和五八年審判第三一〇号事件として審理されたが、昭和六一年八月二〇日、「本件意匠登録を無効とする。」旨の審決(以下「本件審決」という。)があり、その謄本は、同年九月一三日原告に送達された。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙図面(一)

背面図は正面図と、左側面図は右側面図と、それぞれ同一に表れるので省略した。

<省略>

<省略>

別紙図面(二)

<省略>

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